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会員の新刊のご紹介(2022)

浜本はつえ詩集 海に返す

A5判93ページ 詩人会議出版

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全国的な詩人集団「詩人会議」メンバーで県内を拠点とする同人誌「水脈」同人の第2詩集。幼い頃死別した父や祖母、母、弟、そして現在の家族への思いの詰まった11編、表題作「海に返す」をはじめ越前海岸の漁村での営みや海への思いを込めた7編、生活に基づきながら現代詩としての文学的な作品11編からになる3部構成で、29編を収めている。
 突然死去した父のことや小学校時代のこと、家族との生活などを淡々と綴っている第1部は、まるで浜本さんの生活を垣間見るようなリアリティーを持ちながら、大変重い詩の表現として胸に迫ってくる。第1部からは浜本さんがこの詩集に託した思いがヒシヒシと伝わり、第3部の現代詩を意識した作品の明解さにも第2部の生活詠にも勝る。島理加さんによる、出港していく漁船の風景写真の表紙デザインとの取り合わせも成功している。

詩集こよみ~七十二候 川村信治著
 
能登印刷出版部 A6判159ページ
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 勝山市在住の1952年生まれの詩人、川村信治さんの8冊目となる詩集。サイズも装丁もほぼ文庫本だが、あとがきに「四季、一二ヶ月、二四節、七二候(中略)五日ごと」とあるように、2019年3月から2021年3月までに日を追って創作された154編もの作品が、1編1ページずつずっしりと収録されている。表紙、挿絵とも著者による。
 作品は「黄色い花に追いもつけずに」「樫の新緑は」「さるすべり咲く」など、身の周りの自然を題材にしたものや「タマネギを植える」「ダイコンを抜く」「餅をつく」など日々のなりわいを追った日常詠など。しかも、ひらがなだけだったり、横文字で英語が入ったり、スタイルもさまざま変化に富んでいる。暮らしの中の発見を詩という形に昇華させている、川村さんの詩人としての楽しみ、喜びが伝わってくるような詩集。

つれづれ記「汀にて-素描と省察」金田久璋著 土語社(金田氏宅)発行
縦24センチ×横15センチ 111ページ
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 福井県詩人懇話会幹事で県内の同人詩誌「角」発行人の金田久璋さんの新刊。巻末の「覚書」には「ジャンルを問わず、短詩編とも掌編、エッセー、アフォリズム、詩作的断章、小話いずれで呼ばれようともかまわない」と書いている。2021年11月から2022年5月までの日々の出会いの中でのインスピレーションを基にしたつれづれの記。
なにがしかの淡泊なポエジーを仕込んだ文章で、現代詩だけではなく民俗学や小説論など104日分を詰め込み、歌・恋・民俗学の先達である曾祖父の歌人松波資之についての思いをまとめた文章、さらに「天才と凡人の間」と自己分析した思いが述べられている。
表紙の「肱川あらし」をはじめ、敦賀市を拠点として活躍する写真家・吉田俊雄氏のポエジーあふれる写真がちりばめられている。

 笠原仙一詩集「愛の夢」 株式会社「竹林館」刊四六判207ページ
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 県内の同人詩誌「水脈」同人の笠原仙一さんの第七詩集。ロシアの「ウクライナ侵略」と題したセンセーショナルな巻頭詩では、その侵略をタネに「憲法を変え/核共有/敵基地攻撃能力を持て/戦争できる国になれと扇動す」と警鐘を鳴らし「原発に囲まれた国/食料も資源もない小さな国が/戦争をできると思うこと自体/傲慢なのです」とたたみかけている。著者が心臓手術し退院した翌月の2019年10月から2022年5月までの作品49編を掲載。「あとがき」には憲法記念日から創作を始めた詩集は「参議院選挙 国民投票には間に合った。ありがたい。戦前の亡霊よ、アベ政治よ、この詩の矢を受けてみよ 詩の矢を放つ」と発刊できたことでの心意気を示している。画家の松村あ楽人氏、中野和典氏が挿絵のほか、詩が創作された時季に合わせた写真も掲載されている。

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