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「2023ふくい詩祭」報告  2023年11月19日開催  福井県教育センターにて

2023年11月19日に福井市の福井県教育センター大ホールで開催した。詩人懇話会の会員をはじめ、県内の現代詩愛好者が多数参加して、盛況だった。今年のテーマは「先達詩人、岡崎純を語る」。福井県を代表する抒情詩人で、1985年に福井県詩人懇話会が発足した最初の「代表」となり、12期24年間という長期にわたって福井県の詩壇を牽引するリーダー役も果たし先年亡くなった岡崎純についてその詩業や功績をたどった。黒田不二夫代表の開会あいさつの後、前川幸雄、川口田螺、なたとしこの3会員が自作詩を朗読して幕開け、その後、メーンイベントとなった。
 基調講演は「岡崎純さん、詩のもたらす素顔を求めて」をテーマに、現代詩人賞、歴程賞、地球賞などを受賞の中央の詩人、倉橋健一さんを招いた。倉橋さんは岡純純さんを単に「郷土の詩人」として眺めるのではなく、広い視野に立って、日本の現代詩壇の中でとらえ直したいとし、「岡崎さんの詩には柳田國男のフォークロアのように農民に寄り添う姿勢があり、谷川雁や中江俊夫のような民族詩に属したもの」と分析。さらに「詩を通して相互に仲間たちと詩を書く仲間を活かして、福井の詩の土壌を創り上げた」と評価し、人と人とを繋ぐような役割を果たしたとした。

 その後、「岡崎純全詩集」の編纂に当たった岡崎氏の孫である安井杏子さん、岡崎が主宰した同人詩誌「角」の現代表の金田久璋さん、会員の笹本淙太郎さん、岡崎氏の次代福井県詩人懇話会代表を務めた渡辺本爾さんをパネリストに、懇話会の半田信和幹事がコーディネーターを務めて「岡崎純を語る」というテーマでシンポジウムを開催した。
 安井さんは岡崎さんが人生で創り上げた詩を掘り起こす中で、あらためて「祖父が詩に傾けた情熱や詩作の継続への努力などの一端に触れることができた」とした。
 金田さんは岡崎さんが立ち上げた「角」をより理想に近い形にしていく努力の継続とともに、詩人懇話会への貢献も忘れてはならないとし、さらに安井さんとともに「全詩集」の編纂に関わる中で、岡崎さんの呻吟を知ることができたとした。
 また笹本さんは、岡崎さんの詩への情熱とともに、詩を作る仲間へ傾けた愛情についても触れ、さらに渡辺さんは「岡崎純」という巨人の後を任されて7期14年、代表を務めたが、岡崎さんの偉大さをあらためて思ったと回想した。
 会場では、「短い詩を書こう」という創作の催しも行われ、参加者からの作品を募った。この作品は、会報で紹介する。
 また、「詩祭」を終えた後、「岡崎純を偲ぶ茶話会」も開かれ、基調講演の倉橋らも出席し、会員らが岡崎純さんの思い出などを語り合った。

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 2023年福井新聞文化賞を受賞

 本県在住や出身などの現代詩人で構成し、「福井の文学振興に貢献した」として、福井県詩人懇話会は2023年の「福井新聞文化賞」を受賞。11月2日、福井新聞社・風の森ホールで、贈呈式が行われた。

 黒田不二夫代表、渡辺本爾前代表をはじめ詩人懇話会の会員多数が参加。福井新聞社社長から黒田代表に表彰状や副賞を手渡す式典を見守った。

 黒田代表が1985年に県内の同人詩誌の枠を超えた団体として発足し、郷史詩人の顕彰や県内を中心とした詩壇を話し合うシンポジウムなどを伴った「ふくい詩祭」を毎年開催。会員を中心とした福井詩壇のアンソロジー年刊「ふくい詩集」の発刊や、中学校に出向いて行う「詩の教室」などの活動について説明。今年の詩祭で初代から長く代表を務めた岡崎純氏について語ることなどを説明した。

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ふるさと文学館要請の「詩の教室」   2023年7月19日開催 坂井市坂井中学校

 ふるさと文学館要請の「詩の教室」実施
 詩人懇話会は県ふるさと文学館からの要請を受けて実施する文芸講座「詩の教室」を7月19日、坂井市の坂井中学校で開いた。
 対象となったのは、各クラス30人前後の1年生の全4クラス。国語の授業の一環として、あらかじめ同校教諭の指導で生徒たちが創作した詩を題材に、懇話会員が現代詩の創作法や技法などについて説明して、現代詩へのアプローチを展開した。
 懇話会からは黒田不二夫代表、龍野篤朗「詩の教室」事業代表をはじめ、有田幸代、青山雨子、西畠良平ら会員が講師として参加。生徒たちが、谷川俊太郎の言葉で始まる教科書の詩の単元を学んだ上で創作した詩について講評。各作品の着眼点や技法などについて良い点や悪い点を挙げながら、さらに詩の伝達力や表現を深めるためのアドバイスを行った。中野重治や高見順など県ゆかりの詩人について説明する会員もいた。

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2023年初 詩の教室   2023年7月5日開催 福井市藤島中学校

 福井県詩人懇話会の会員が教壇に立つ中学生を対象とした今年初の「詩の教室」が7月5日、福井市の藤島中学校で開かれた。同校からの依頼を受けての開催で、1年生の3限時、4クラス110人余りが対象。大橋圭子教諭が担当して、国語の単元の一環として実施され、黒田不二夫代表をはじめ龍野篤朗「詩の教室」担当ら、6人の会員が参加した。
 各会員は前半で、中学生にも分かりやすい現代詩の鑑賞から入り、擬人法や詩独特の比喩の表現などの技法などについて説明。後半30分は生徒たちが自由にいろいろなことをテーマにして、実際に現代詩を創作した。
 同中学校の校歌は、青年期に福井市を訪れたことがあり、後に日本現代詩人会会長も務めた著名な詩人安西均が作詞し、同校は現代詩とゆかりが深い。会員からはこの詩の教室が生徒たちの現代詩へのアプローチの一助となればよいなどとの声も聞かれた。

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第24回詩のよもやま話   2023年6月17日開催

 2023年6月17日、福井市の県教育センターで開催、会員ら20名余りが出席した。懇話会幹事の刑部あき子さんが「安西均と福井について」、懇話会代表の黒田不二夫さんが「橘曙覧とその短歌」をテーマに話をした。
 刑部さんは、自分が信奉する詩人・安西均がかつて福井を訪れたということをNHKのラジオで知り、その事実を取材して掘り下げ、同人である詩誌「青磁」19、20号に発表した内容を基に、驚きの事実だったと話を展開。「語り尽くせぬ詩人」といわれた現代詩の巨人・安西均が青年期に福井を訪れ、死ぬつもりで三国の東尋坊を訪れたが、そこで知り合った人に諭され、福井市の牧師館に滞在。受洗して再び上京したという、福井での転機を「安西均全集」から読み取り、福井神明教会の上垣勝牧師への取材、安西と関係のあった詩人・三井葉子さんとの手紙でのやり取りなどから、昭和60年の創立である福井市藤島中学校の校歌を安西が作詞したことに行き着いて、安西自身が福井との繋がりに晩年まで思いを馳せていたのではと語った。
 また、黒田さんは自身が所属する「橘曙覧研究会」の研究成果などから、幕末の福井で活躍、藩侯松平春嶽や歌人・大田垣蓮月尼らとも交流のあった歌人についての考察を発表した。国学者で尊皇主義者として作った歌が戦前に軍国主義に利用されたため、戦後はあまり語られず「忘れられたような存在」になっていたのが、1994年に天皇ご夫妻が訪米した歓迎でクリントン大統領が英語で引用したことから脚光を浴び、「楽しみは」で始まる「独楽吟」が再び多くの人に親しまれていることを評価した。
 さらに明治期には正岡子規が「万葉に繋がる」とし、斎藤茂吉も「家常茶飯の中から芸術を浮かせた」と評価したことを紹介。曙覧の生活全般に及ぶ作歌の手法などについても紹介した。

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総会及び詩のよもやま話   2023年4月16日開催

 詩人懇話会の2年に1度の総会が4月16日(日)、福井市の県教育センターで開かれ、第19期(2021・2022年度)2年間の活動を締めくくるともに第20期(2023・2024年度)の新役員や活動計画などを決めた。
懇話会の代表は渡辺本爾氏から黒田不二夫氏に引き継がれ、人事では会の運営事務局を複数運営に再編するとともに、会計監査の役割を担う監事を「監査員」と職名に換えた。
渡辺前代表は「この会を緩やかな現代詩の組織として運営できた」と任期中の活動を振り返り、黒田新代表は会を円滑に運営していくなど抱負を述べた。
総会の後、「詩のよもやま話」が開かれ、ネット上で多くの児童文学発表し、敦賀を中心とする同人詩誌「角」同人てもある川口田螺氏が「私の詩作遍歴」をテーマに、膨大に書きためてきた現代詩創作への思いなどを語った。

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