top of page
事業報告

第47回詩書を祝う会

 47回目となる詩人懇話会員の発刊した詩書を祝う会が2月25日、福井市の県教育センターで開かれた。会員約20名が参加、4人の会員が新刊詩書について作者の思いをインタビューを交えて発表した。  西田昌弘さんは自選詩集「青空に線を引く」についてこれらを選んだ思いなどを語り、黒田不二夫さんがインタビュー。西田さんの詩の表現について考察を掘り下げた。笠原仙一さんはロシアのウクライナ侵略停止など政治的な課題も挙げた詩集「愛の夢」について語り、龍野篤朗さんが断固たる姿勢について問うた。日記のように日常の営みを綴った詩文集「汀にて」を出した金田久璋さんは渡辺本爾代表から日々創作の積み重ねについて評価された。また、強い真実を背景にした生活朗詠をまとめた「海に返す」を著わした浜本はつえさんは、生活詠に留まらない詩作の広がりを語り、インタビュアーの西畠良平さんは厳しい現実の積み重ねの言葉に涙が出る思いをしながら読んだと、浜本さんの創作の営みの苦労について聞いた。  最後に、新刊詩書を出した西田さん、笠原さん、金田さん、浜本さんに懇話会から花束を贈呈して、記念写真を撮った。

第23回詩のよもやま話   2022年12月10日開催

今回の詩のよもやま話は2022年の年12月10日、福井市の福井県教育センターで開かれ、会員17人が出席した。
 1人目の発表者は龍野篤朗氏で、「南信雄の『蟹』を読んで」というテーマ。福井県内の同人詩誌「木立ち」の同人で、詩人懇話会の設立メンバーであり福井県現代詩壇をリードする役割を果たしながら、大病を患って惜しまれながら亡くなった詩人・南信雄の代表作「蟹」などの作品と作風について龍野氏の解釈を話した。
 南の詩は、貧しい漁村という背景から生まれ、その描写では哀しみ、苦痛を凝視するが、作品の根底にある慰めは、「南個人」の域を超えたと、人間の生死と生活を見つめた南を評価。そして、現代では南の作品に根底にあるような祈りが喪失しつつあることが社会の荒廃を生んでいるのではないか、このまま物質の豊かさが人々の絆を弱めてしまったら、人間にはどういう意味があるのかと、問題提起した。
 2人目の発表者は川嶋悦子氏で、「太宰治の詩的表現」がテーマ。大学の卒論が太宰治で、全集や研究書などに当たった経験から、太宰の作品に現われた詩的表現について話した。太宰の短編作品「葉」を句点で改行すると、詩そのものになるのをはじめ、「道化の華」「めくら草紙」など他にも詩に通じる作品があり、津軽弁で書かれた「雀っこ」の冒頭と末尾には詩が直接書かれていることを示した。その他、「創世記」「Human Roast」「二十世紀旗手」「懶惰の歌留多」などは小説全体が散文詩なのではと考察。さらに中原中也から受けた影響にも触れ、中也の詩の引用は小説にないが、中也の詩作「汚れちまった悲しみに」に通じる哀感が漂っている作品があり、影響を受けていたことは確かだろうとした。
 太宰は、多様な作品を書き続けたものの、どうにもならず自ら命を絶ったが、彼の残した数々の言葉は「詩のように私の中に生きている」と結論づけた。

​「詩の教室」福井市大東中学校  2022年11月25日12月3日

 福井市円山地区を「終の棲家」とし、その地で生涯を閉じた詩人・則武三雄が校歌を作詞した同地区大東中学校で、11月25日と12月2日、の両日、円山文化振興会、円山公民館、同中学校の主催で2年生を対象に「詩の教室」を実施。詩人懇話会会員が講師を務め、則武詩人の生涯や作品を紹介、それを参考にしながら生徒たちは詩を作った。 懇話会から渡辺本爾代表、有田幸代、西畠良平両幹事、青山雨子、杉村敏隆両会員の5人が参加した。初日には、鳥取県生まれでありながら、本県三国に疎開していた師と仰ぐ三好達治を追って来福。本県が終焉の地となった則武の生涯と詩作を紹介。2日目には、則武をはじめいろいろな現代詩の作例を示しながら、明喩や暗喩、擬人法など詩のテクニックを紹介し、生徒たちにそれぞれテーマを考えて実際に創作してもらった。一部の作品は福井市文化祭や新聞などでも紹介する。

「2022ふくい詩祭」のご報告   2022年11月5日(土)

福井県詩人懇話会が主催する年間最大の事業である現代詩のイベント「ふくい詩祭」が11月5日(土)に福井市の福井県教育センター大ホールで、懇話会会員をはじめ県内の現代詩愛好者らが多数参加し、有田幸代会員の総合司会で開かれた。
 はじめに渡辺本爾代表が「県内の物故詩人の文学忌の在り方を考える機会に」と開会あいさつし、続いて詩人懇話会会員による自作詩の朗読があった。野尻益子さんが「カノンロック」、中林千代子さんが「名付けられないまま」、半田信和さんが「島を歩く」の、それぞれの自作詩を読み上げ、その後、朗読作品や詩作への抱負を語った。
 その後、福井市出身で東京都在住の文芸評論家・渡辺喜一郎さんが「ふるさと文学のこれから-文学・詩人忌を起点に」という題で基調講演した。
「短い詩を書こう」という休憩タイムを挟んで、佐野周一詩人懇話会副代表がコーディネーターを務めて「県内の文学忌の展望-詩人の忌を中心に」をテーマに、メーンの行事であるシンポジウムが開かれた。
 詩人懇話会の前代表・岡崎純を偲ぶ「蝸牛忌」について運営の金田久璋会員が、中野重治の「くちなし忌」について主催団体の坂井市図書館の吉川幸江副館長が、高見順の「荒磯忌」と則武三雄の「葱忌」について、永年参加してきた張籠二三枝・三好達治の詩を読む会代表が、広部英一の「苜蓿忌」と詩碑の建立された南信雄について登山家で作家の増永迪男さんが、山本和夫を偲ぶ会について最晩年の弟子であった三嶋善之さんがそれぞれ登壇。会場からは千葉晃弘会員が杉本直を偲ぶゆかりの土星荘の忌について、発言。

 それぞれの「文学忌」の現状と、今後について、既に役目を終えたとしての廃止や、優れた文学を次代に伝えるためにどう存続して行くかなど、熱心な討論が交わされた。最後に佐野副代表があいさつして詩祭の幕を閉じた。

第46回会員の詩書を祝う会 2022年9月17日(県教育センター)

中日詩人会と福井県詩人懇話会が共催する中日詩話会、第46回「会員の詩書を祝う会」が9月17日(土)、福井市の県教育センターが開かれたた。詩人懇話会の渡辺本爾代表はじめ会員ら20名あまりが参加し、この間に新たに詩集などを発刊した会員から話を聞くとともに、参加した会員から感想などが寄せられた。始めに中日詩人会詩話会の例会作品として中日新聞文化面に掲載された詩、杉本敏隆さん「ゾルゲの草原」、千葉吉弘さん「木と石」、西田昌弘さん「霞堤」を作者自身が朗読し、創作への思いを語った。その後、会場の会員から質問や感想が寄せられた。この後、千葉晃弘さんの随想集「土間の一灯」を龍野篤朗さんが質問者、野尻益子さんの第一詩集「少しだけ町を歩こう」を佐野周一さんが質問者、中林千代子さんの詩集「名づけながら」を笠原仙一さんが質問者、半田信和さんの詩集「ギンモクセイの枝先に」を川嶋悦子さんが質問者となって、それぞれの新刊を作者の思いなどが、発刊動機や詩作の意味などが質問を交えて紹介された。 「土間の一灯」では千葉さんが亡くなった同人の詩人・杉本直さんの思い出の品をゆかりの土星荘から持ち出したときのことなど、「少しだけ町を歩こう」では野尻さんがあわら市の小説家・西里えりさんの勧めで詩を書き始め詩集を出すに至った思いなど、「名づけながら」では中林さんが日々の触れあいを「名づけ」ながら定義し直す意味など、「ギンモクセイの枝先」では半田さんが子どもたち向けの詩集と考えながら自身の詩作についてもあらためて考えたことなどが、作者自身の言葉で質問を交えて解きほぐされた。 今回は荒天の予想やコロナ禍などで中日新聞社の中日詩人会からの参加はなかったが、最後に今回紹介した詩書を発刊した4人の会員を中心に、参加者全員で記念撮影した。

​詩の教室 2022年7月11日(坂井中学校)、7月28日(春江中学校)

福井県ふるさと文学館の依頼で、福井県詩人懇話会の会員が生徒たちを対象に実施する「詩の教室」が7月11日には坂井市の坂井中学校、7月28日には同市春江中学校で実施された。このうち、坂井中の「教室」には黒田不二夫、龍野篤朗、半田信和、有田幸代、西畠良平の5会員が講師として参加。1年生の5クラスで前半は詩の鑑賞や詩作の方法などについて話し、後半は生徒たちが自由に詩の創作を行った。それぞれの講師が自分の詩作のやり方を基に、詩の発想方法や現代詩の言葉の使い方などについて説明。生徒たちはそれらを参考にして、めいめい詩の創作に励んだ。また、28日の春江中の「詩の教室」は、週の真ん中のウイークデーで連続した5時間で実施することになったため、普段から中学生に詩などについて教えている半田信和会員が1人で担当した。

第22回詩のよもやま話   2022年7月16日開催

DSC163a.jpg

第22回詩のよもやま話が7月16日、福井市の福井県教育センターで開かれた。有田幸代氏の司会で、第1部は西畠良平氏が「若者のうたと現代詩」と題して、2020年の詩祭のテーマでもあった現代の若者たちのうたと現代詩の「共通点=近さ」「隔たり」などについて、吉本隆明が立てた「谷川俊太郎から中島みゆきへ」「小長谷清美からさだまさしへ」などの例を挙げ、今後の若者たちの現代詩への参加の可能性に期待を寄せた。第2部では漢文や古典文学などについて研究している前川幸雄会員が主宰する「縄文の会」会員の、鈴木広江氏が「源氏物語と仏教」と題して、源氏物語から仏教や仏典に基づく記述を採取して、その原点である仏教思想との関連を探るといった研究について論じた。鈴木氏自身が真宗大谷派の寺院に在り、そこで触れた仏典の痕跡を源氏物語の中から読み取ることができると説明した。

第21回詩のよもやま話   2022年4月16日開催

第21回詩のよもやま話が4月16日、福井市の福井県教育センターで開かれた。西畠良平氏の司会で、第一部は漢文研究などをしている前川幸雄氏が「『魚服記』―太宰治の作品が出るまでの日中両国の作品―」と題して、太宰の短編小説「魚服記」は中国の故事などに刺激されて成立したのでないかなどと論を展開。根拠となる中国語の記述などについて説明した。第二部では民間伝承について研究を重ねている金田久璋氏が「『遠野物語第二話』―幽霊譚―をめぐって」と題して、遠野物語の著者である柳田国男が岩手県の遠野地方で取材し、物語の原点となった「幽霊」についての民間伝承などについて論じた。
コロナ禍で中断していた「よもやま話」が再開されたが、再開第1回で、前川、金田の両氏とも「詩」について言及はなく、文学の「よもやま話」の感があり、次回からは詩の要素をとの意見が幹事会で出された。

bottom of page